フリーアナウンサー樋口香織のホームページ 兵庫県、大阪府を中心にアナウンストレーニング、話し方、演劇ワークを使ったコミュニケーション術と内気改善プログラムをお伝えしています。

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党生活者

カテゴリ : 読書感想文

小林多喜二といえば圧倒的に『蟹工船』が有名ですが


今日は『党生活者』を何年かぶりに読みました。



来月開催の「大阪多喜二祭」の文化行事で

スライドと朗読をすることに決まりましたので

実行委員会メンバーで多喜二作品の

どの部分を朗読するのがふさわしいか

意見を出し合うために皆で今一度

多喜二作品を分担して読もうということに

なりました。

そして私の担当が『党生活者』ということに

なったのでさっそく読んでみました。



数年前よりも格段に面白くなっている!

一気に読んでしまいました。

何故こんなに面白くなったのでしょうか。

それは

より現代的な小説になっているから・・・ですね。

非正規労働者の問題
核エネルギー問題
特定秘密保護法案の可決
集団的自衛権の閣議決定
東日本大震災の復興問題
韓国朝鮮との関係



奇しくもこの時代は関東大震災の後の頃ですね。

小説は戦前ファシズム体制下での闘争が

リアルに描かれています。

主人公はパラシュートや毒ガスマスクを作る

軍需工場で同志と共に労働環境の改善を

要求したり反戦運動をしたりしています。

やがて工場を首になり、下宿にも戻れなく

なった主人公は住まいや活動費が必要な

ことから笠原という女性と一緒になります。

しかし主人公は自分を支えてくれる笠原が

「たまには時間をつくって二人で散歩が
したい」

とか言うようになると彼女に対して不満が


募りはじめます。

そして同志で熱心な活動をしている

美人の伊藤に好意
を持ち始めるのです。

個人生活も大事にしたいと訴える笠原が

だんだん鬱陶しくなってきたのですね。

ヒモのくせに(^^)

だいたい100%共同体のために捧げる

生き方なんてできるはずもない。

だったら女性なんて好きなっては

おかしいでしょう。

利便性で女性と共同生活をする。

夫婦を装うことで怪しまれにくいし

活動資金も提供してもらえる。

しかも女性の方はその活動家を

愛しているのです。

時代背景もありますし

非合法の中の運動にはそれなりの

犠牲があるのは仕方ないことかも

しれませんがここに

罪の意識がないとしたら問題です。

「せめて罪悪感にさいなまれてくださいよ~」

って言いたくなるのです。

多喜二にはそこのところの常識さが

あるんです。




リアルな活動の様子は当時多喜二が関わった

闘争がベースになっています。

個人の主体性と革命のための強い連帯意識の

間で多喜二は葛藤したのかなと想像します。

当時はこんな風に女性をハウスキーパーとして

犠牲にしながら運動をしていたようですが

現代の感覚からすれば非常に不愉快ですね。

自由と平和のために命がけで闘う姿は

皮肉な事に、自由と平和からかけ離れた姿に

なってしまっているのです。

よくありそうな矛盾です。


それにしても自分たちのやっている活動を

モロに描いた作品なのに主人公を

カッコよく描いてないところが多喜二の

すごいところだと思います。

ありのままを書こうとしているように

見えるのです。

人間ってどんなに立派な人でも自分中心に

考えるものだと思うし人間だからしょうが

ないのだけど、そこで立派そうなことばかり

書くのではなくてイケてないない部分も

見せようとする多喜二の公平さに

ものすごく魅かれます。

女性に対しても完全に平等の意識をもって

いたことが多喜二の作品や書簡から

伝わってきます。

この作品は多喜二が特高警察の拷問によって

殺されてしまったことから前篇のみで終わって

いますが、みんなの平等や自由を求めての

運動によって女性を奴隷化している現実に

多喜二は悩んでいたのだろうと思います。

この多喜二の問題意識のセンスが

何より好きなんですね~私は。

ということに改めて気付かされた

『党生活者』でした。

もうプロレタリア文学を超えています。




「党生活者」 小林多喜二
定本 小林多喜二全集 第八巻
新日本出版社

青空文庫でも読めますので是非
お読みください
  ↓  ↓
『党生活者』

2016-01-04 23:16:20

ガラスの動物園

カテゴリ : 読書感想文

アメリカの戯曲。

身に覚えのあるような重苦しさがある。


娘に人並みの幸せをという希望を

抱きながら最後の望みをかけ

夢破れる母親。

社会に適合することができず

母の思いに応えられない娘。

将来を悲観し焦る母はある策を

講じる。

かみ合わない思いを軸に

闇と光が浮かび上がる。

キーワードは

「インフォリオリティコンプレックス」と

「ブルーローズ」

劣等感に対して青いバラは

その人のもつ最高の美徳とでも

いうようなものの象徴である。


母のはからいで娘の前に現れたのは

かつてのクラスメートの男性。

偶然にも彼女が人生でただ一度だけ

好きになった人だった。


世の中には

インフォリオリティコンプレックスの

ある人とない人がいるのではなく

気づいている人と気づいていない人が

いるだけではないだろうか。

気づいてしまうと生きづらいかも

しれないが、奥深い場所で誰にも

知られず咲いているブルーローズに

出会える可能性も生まれる。


足に障害をもつ極度のはにかみ屋の

ローラは人と思うように付き合うことが

できないでいる。彼女の大の仲良しは

ガラス細工の動物だちだ。

一方学生時代きらきらしていた

モテ男のジムも実際いつまでも

輝きを放ってばかりでは

なかったのである。

闇と光は一本の棒の両端にすぎず

どちらか一方しか存在しないという

ことはありえない。

誰の内にもきっとローラ的な

何かが少なからずあるはず。


そんな自信のもてない、普通に

振舞うことすらできないローラの

繊細さの奥にある美しさを

発見したジムは「君は美しい」と

伝えローラを生まれてはじめて

輝かせた。

この自信の原型のような種を

自覚させてくれたのだから

ここでローラが生まれ変われた

のだとしたら

後で無残にも失恋のどん底に

叩きこまれるのを相殺しても

ジムの言動はありかなと思う。

自分を失恋の憂き目に遭わせて

くれる人もまた貴重な存在なのかも

しれない。



人間は完全じゃない。

それなのに大人になるにつれ

自分は万事大丈夫と周囲に

思わせることに必死にさせられる

ことを無条件に受け入れ

虚勢を張り自分に無理を

押しつけながら生きている人が多い。

うつ病の原因のひとつではないだろうか。



誰しもローラであり、ジムなのかも

しれない。であれば

誰かの内奥にローラ的なるものを

見つけられる人でありたいし

その時はジムのように愛の告白

ではないにしても

誰かを人生のクライマックスといえる

ほど輝かせられるくらいの慰め方が

できたならこの世界はもっと

住みやすく、ひとりひとりが

その美徳をありのままに

発揮できる世の中になるだろう。

無差別殺人のような犯罪は

きっと減るだろう。

でも

ジムを待っていてもしょうがない。

ジムのような人はそんなに

簡単にはやってこない。

待っているよりは自分がジムに

なってみたほうがよっぽど早い。

目の前の人が輝けば自分も

相手の輝きを受けいつもまにか

光っているだろう。


教え込まれた概念から自由になり

自分の存在、相手の存在を

あるがままに承認することは

この世の最上級の美=ブルーローズを

手にすることに等しいとこの物語は

いっているのではないか。

時代を超越して人の心をとらえる

古典が古典たりうる理由が

ここにあるような気がする。

互いを承認しあえることの

素晴らしさと永遠不変の深い

博愛の精神が流れている。


滑稽な絵画を見ているような

作りで、気が付いたらじんわり

励まされているような温かさに

魅了される不思議な物語だ。




ガラスの動物園
テネシー・ウィリアムズ
訳 小田島雄志
新潮文庫






2015-10-22 00:42:24

禁断症状

カテゴリ : 読書感想文

手元に読む本がなくなると

禁断症状が出ます(^.^)



突然意味なく新聞や新聞広告を

広げて隅から隅まで目を通したり

製品の裏に記載されている

使用方法や成分などの小さい文字を

ひたすら読んでみたり

字を探してしまいます。



でもやっぱりつまらないので

結局本を数冊手に入れ

やっと心が落ち着きます。

ほとんど物欲などない私ですが

本だけはどうしても飢えを感じて

しまいます。

美しい文章に触れていないと

生活そのものが灰色になって

しまいそうな気がします。


ジャンルはいつもだいたい同じ。

いちばん多いのが文学・哲学・思想

次に多いのが心理学・社会学みたいな系統

後は宇宙・古生物系ですね。

それからドイツ語やドイツに関する本も

見つけたらつい読みたくなってしまいます。

非常に偏っています。



今日は4冊の本を手に入れました。

心理学3冊と現代思想っぽいのが1冊。


面白ければ感想文書きます。

つまらなかった本の感想は基本的に

書きません。

わざわざつまらないものについて

書く気がしないし批評家じゃないので

そこそこ面白かった本についてだけ

書いています。著者への尊敬を込めて

一生懸命感想を述べます。

感想文を書く書かないの比率はだいたい

50%50%くらいかな~。



期待を込めて読んだ本がつまらなかったり

数冊の本にまぎれてたまたま買ってみた

本が人生に大きく影響を与えたりするから

読書は本当に面白い。

名作は年を重ねるごとに読み返すと

さらに面白い。

とにかく

何でもいいからピンときたら

貪り読んでみます。

4冊あればしばらくは飢えを

しのいでいけそうです。





2015-10-20 07:31:40

多くの人が、この本で変わった。

カテゴリ : 読書感想文

ちょっと印象的なタイトルの本。

ここに書かれていることを

私なりに一言に集約するとすれば

「自由度100%」って感じかな。

ここのサイトはFreiheit=自由

だけど私が気に入って付けた

この自由とはこの本のいうところの

自由と正に同じです。

何度も読み返している本だけど

読んだ時に深く励まされるような

気持ちがするときは自分が自由から

離れているときかもしれない。

ニュートラルな位置にいるときは

さして大きな感動も面白みもない。

そんな感じ。

だいたいストレスの強い時に

読みたくなります。

とても自分自身に浸透している

からかな…特に感想がない(笑)

誰にでもおすすめできる本だけど

誰にでもすすめない本です。

タイミングがきたときに自然に

めぐりあってほしいから。



多くの人が、この本で変わった。
著者 津留晃一
発行 株式会社英光舎。

2015-10-11 06:14:39

ZOO 1

カテゴリ : 読書感想文

ある方にお借りした本です。

人に借りて読む本は普段あまり

縁のないジャンルのため

目新しくて楽しいものです。


お借りする際

『とにかく気持ち悪い本だけど大丈夫?』

もうこの一言で期待が高まります。

ファンタジーホラーの短編集です。



虚構の世界ですから

あまり意味を深追いせず

その残虐性を楽しむホンです。

こういうことを書くと変質者っぽい

かもしれませんが

光を愛するのと同じように

闇も愛していきたいのです。



青少年にはあまりお勧めできない

ですが虚構は虚構と冷静に

判断できる人が読むのは問題ない

かなと思います。

この手のものに触れることは

人間のもつ残虐性とは真逆の

神聖な境地もまた存在している

ことを表しているように思うのです。




大好きだけどこういうのばっかり

読むのはやめておこう(^.^)

といいながら「ZOO 2」を読みます。





ZOO 1/乙一
集英社文庫
2015-09-16 06:28:21

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